チタンのクランクパイプの特注依頼を頂いた、結構お高いけどもちろん製作可能。
しかし製作条件が問題だった、同じ外径で同じ強度にして欲しいとの事、まぁ同じ外径で完全に同じ強度の物を作るには想像を絶する程のお金がかかるので近い強度にするとして…。
「ステンレスの方が軽くなりますけどそれでも良いですか?」って聞いたらこの依頼は無くなりました。
チタンはステンレスの半分強の軽さでほぼ錆びないという素晴らしい金属なので釣り界隈ではやたらと信者が多い、それなりに材料を知っている人ならこの時点で失笑しているでしょうな。
チタン(この場合は64)はステンレスの半分強の強度しか無い、タニサンクラフトの製品で言うところの強度はヤング率が関係。
(たまにこれを間違えているメーカーさんも・・・)
パイプは同じ外径だとすれば肉厚を上げる事で強度を保つことになるが、肉厚を上げたところで意外と強度には効いてこない、その要素は簡単な計算式でπ(D⁴-d⁴)/64。
3.14×(外径⁴-内径⁴)÷64ですよ。
これ以上は説明すると面倒になるので上記の概念だけ理解できたところで自動計算しちゃいましょう。
これで片持ちの集中荷重で断面形状は〇パイプを選択して、材質SUS304でパイプ外径13内径11長さはとりあえず500に、荷重は98で計算、次に材質を64チタンで外径13内径9つまりは肉厚を倍に変えた物で計算してたわみと重量を比較してみて下さい、材料特性の一部を垣間見えて面白いですよ。
計算してみました?
面白い結果でしょ?
チタンの方がたわむのに重くなるなんて!っとびっくりされる方も多くおられるのでは?
という訳でタニサンクラフトのクランクパイプやストレートパイプは強度が同等以上だとすれば軽さを売りにしている中空チタンピトン等よりも軽い事が多いのです。
こういった計算に初めて触れた皆様へ、
強度を上げつつ軽くするために太くするという概念がありうるという事に気づかれましたでしょうか、
中実だからと言って大して強くない場合もあるという事に気付かれましたでしょうか、
これだけ知ったうえで釣具を含めた工業製品を見ると面白くなりますよ、ウソ情報の多い事…、もう少し知ると市販品がコストのための妥協している点に気付いたり、今どきのシャープさを売りにしたロッドに対する疑問が生じたり・・・。
チタンを検討される場合のコツとして、
絶対に錆びてはいけないのであればチタン一択(医療向けなど)、
軽くしたいがためにチタンを選ぶ場合は、さほど強度が必要ではなく、ステンレスでこれ以上薄くできない場合に同じ厚さのチタンで作って軽さを稼ぐ場合などとした方が良い、
強く締め付けるチタンボルトにチタンナットの組み合わせはできるだけ避ける。
最後に、チタンはポイントクランプノブとの相性が非常に悪いのでご承知ください。